診療所便り~Vol.5~

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酸蝕歯(さんしょくし)について 瀧本正行

 こんにちは。新島村診療所歯科の瀧本です。さて,このコラムを書くにあたりとても悩みました。歯科疾患といえば齲蝕(うしょく、いわゆる虫歯)ならびに歯周病が挙げられると思いますが,今更“歯はきちんと磨きましょう” “甘いものは控えましょう”と言われても全然面白くないですよね??ですので今現在歯科疾患においてクローズアップされており,齲蝕,歯周病に続く第3の歯科疾患といわれている酸蝕歯(さんしょくし)について書いてみました。

酸蝕歯とは??

 歯がしみたり,歯が欠けているのに歯医者さんに虫歯ではないと言われたことはありませんか?もしかしたらその症状は酸蝕歯が原因かもしれません。虫歯は細菌が出す酸によって歯を溶かす疾患であるのはご存じだと思いますが,酸蝕歯は,細菌が関与することなくふだん口にしている飲食物が歯を溶かしてしまうのです。初期は無症状のまま進行するため,その発見が遅れる傾向にあると言われています。進行すると冷たいものがしみたり,咬んで痛みが出たり,歯の色が変化するといった自覚症状が出てきます。さらに進行すると,歯が割れてしまうこともあります。かつては,酸蝕歯はメッキ工場やガラス工場などにおける酸性ガスの吸引が原因とされる職業病とされていましたが,現在では食生活の変化に伴う炭酸飲料やワインといった酸性飲食物の過剰摂取が主な原因と考えられています。よって,酸蝕歯は大人子ども問わず誰にでも発症する疾患となったのです。

酸蝕歯の原因

 ではどのようにして酸蝕歯になってしまうのでしょうか。その原因は内因性と外因性があります。内因性のおもな病因は,胃液の影響です。胃液のpH値は1.0~2.0と強酸を示し,これが口腔内に逆流することで歯が溶け出します。関連疾患としては逆流性食道炎,拒食症,摂食障害による嘔吐などがあげられます。外因性のものは,飲食物がおもな原因となります。酸蝕歯との関連が疑われる飲食物は,レモンなどの柑橘系果物,酢の物,炭酸飲料,スポーツ飲料,ワイン,お酢系飲料があげられます。柑橘系果物やお酢系飲料は身体によいとされており,毎日摂取されている方もいますが,身体にはよいものの歯には悪い場合もありますので摂取には注意が必要です。

酸蝕歯の予防

 まずは,日頃の生活習慣に,過剰に酸性飲食物を摂取してないかチェックし,食生活習慣を見直してみましょう。特に運動中ダラダラとスポーツ飲料を飲む方,毎晩晩酌をされる方は注意が必要です。とは言ってもまったく酸性飲食物を摂取しないというのは難しい話になりますので,なるべくお口の中に酸が長時間残らないように心がけてください。摂取後は水やお茶で酸を洗い流すと効果的です。また,デンタルガムを噛んでいただくのもよいと思います。ガムを噛むことで唾液分泌が促進され,口腔内の酸性環境の改善が望めます。酸性飲食物摂取後の歯磨きについても注意が必要です。摂取直後は,エナメル質表層が酸によって軟化している可能性があります。唾液の力による回復が十分に望める30分後に歯磨きを行うことが理想的です。しかし,食後は歯の汚れが気になり時間的余裕のない方も多いと思います。そのため,歯磨き前に一度口をゆすいでから歯磨きをするなどの工夫をするとよいでしょう。酸性飲食物は,私たちの身近にあるものばかりです。身体にとってよいと思い摂取していたものが歯の健康を害する可能性があるということです。しかし,正しい知識をもつことでそのリスクを減らし,歯を守ることができます。現代の歯科医療では残念ながら,自分の歯に勝るものはありません。お口は健康の入り口という言葉があるように,お口の中の健康を保つことが身体の健康への近道なのかもしれませんね。

2015年2月1日 歯科医師 瀧本正行

参考文献

北迫勇一:酸蝕歯の病態ケア食生活.デンタルハイジー,32(10):2012
宮崎真至:Tooth Wearと生活習慣.日本歯科評論,68(7):2008

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